洋楽の訳詞(76)-Norwegian Wood
2009 / 10 / 31 ( Sat )
 今月は甥の13歳の誕生日があった。例年通りプレゼントは何にしようかと悩んだが、今年はすぐに名案が浮かんだ。先月発売されたビートルズのリマスターCDを何枚か買ってあげよう!
 これが名案である理由は二つある。私自身ビートルズとの出会いが中二のときで、甥にも同じ年齢で同じ感動を味わってもらいたいということが一つ。そして、もう一つの理由は、このリマスター版に興味はあるものの、まだ一枚も購入していなかった自分もそれを聴けるかもしれないという期待であった。同じマンションに住む甥は、もらったプレゼントを我が家に置きっぱなしにすることが多い。特にもらったものにさほど興味を示さない場合にそうなりやすいことを長年の経験で知っていた。だから、このプレゼントが同じ運命をたどった暁には、思う存分聴ける...こういう一石二鳥の好機を利用しない手はないだろう。
 かくして、半分は不純な動機により購入したビートルズのアルバムは3枚。どれを選ぶかで、またずいぶん苦労したが、最終的には次の3つにした。
1.『プリーズ・プリーズ・ミー』
2.『ラバー・ソウル』
3.『レット・イット・ビー』
前期・中期・後期からそれぞれ一枚という構成だ。
 甥の反応はというと、意外なほど大喜びであった。すでに私の影響で小さい頃からそれなりに聴き知っていたのもあるのだろう。今どきは学校の音楽の時間にも聴かせることもあるようだから、おお、あのビートルズかぁ、と興味もわいたのかもしれない。「ありがとう」と言ってすぐに家にもって帰った。いっしょに聴こうかと尋ねる間もなく...
 一週間ほどして、甥は目を輝かせながら、私に言った。「ノルウエーの森っていいね。あれ最高!いつもipodに入れて聴いてるよ。」「ノルウエーの森」とは「ラバー・ソウル」に入っている曲だ。あとは「レット・イット・ビー」(曲)も大好きだと言っていた。
 おこぼれに与ろうとするわが目論見は見事にはずれたが、甥をビートルズに感化させる試みは大成功だった。そんな彼のささやかな成長を祝して、彼が最初に気に入ったビートルズナンバー、”Norwegian Wood(ノルウエーの森)”を訳してみたい。

 上述のとおり、この曲は「ラバー・ソウル」(ジャケット写真の4人の肖像がゴムのようにぐにゃっとなっていることからつけられた名前)に入っているジョン・レノンの作品である。ビートルズ中期の音楽は、このアルバムから始まる。中期のビートルズ音楽を特徴づける要素は何かというと、それまでのギター、ベース、ドラムを中心としたバンド編成から、多種多様の楽器を使いはじめた点が一つ。また、詩についても、単純に男女の恋を歌うラブソングだけであったのが、社会風刺やメッセージ性をもったもの、空想的な情景を描いたものが出てきたのも大きな特徴であろう。「ノルウエーの森」は、この両方の要素をもった、まさに中期ビートルズサウンドを代表する曲である。
 まずイントロから使われているのは、当時インド音楽に傾倒し始めたジョージがインドから持ち帰ったシタールという楽器だ。ジョージが紹介した楽器は皮肉なことに、まずジョンの曲で効果的に使われてしまった。ジョージはこの後、自らシタールを使った曲をいくつも発表するが、どれもいかにもインド音楽という感じで、評価は微妙である。
 歌詞についても、それまでのビートルズ、というかジョン・レノンの詩には見られなかった幻想的な情景が描かれている。登場するのは一組のカップルだが、淡々と彼らの過ごした一晩の出来事が語られる。そこには色恋沙汰もなく、最後はノルウエーの森に一人取り残された男が煙草に火をつけるという、不思議な詩である。
 この曲のタイトルそのままを使って大ヒットを飛ばしたのが、村上春樹の小説『ノルウエーの森』である。近々映画化されるとかでふたたび話題になっているが、私自身はこの小説は大きらいである。物語の冒頭、主人公が飛行機の中でビートルズのこの曲を聴き、嗚咽するところからして、クサい。内容的には単なるポルノなのに、純文学気どりもいやだ。しかしながら、著者が登場人物の男女にこの曲の二人をだぶらせているようだということはよくわかった。


ビートルズ ― ノルウエーの森



(訳詞)
ノルウエーの森

かつて僕には女がいた
いや、女にはかつて僕という男がいた
というべきかな
彼女は僕を家に招いてくれた
素敵だろ
ノルウエーの森

彼女がどこでも座ってと言ったから
見渡してみたけれど、どこにも椅子はなかった

僕はボロきれの上に座り
時期を待った
彼女のくれたワインを飲みながら
僕らは2時まで話し
やがて彼女は言った
「寝る時間だわ」

「翌朝は仕事なの」と彼女は言って笑い出した
「こっちは仕事がないけど」と言って僕は寝袋に入った

目が覚めたら
僕はたった一人だった
鳥は飛んで行った
だから僕は煙草の火をつけた
素敵だろ
ノルウエーの森

(原詞)
Norwegian Wood

I once had a girl,
Or should I say
She once had me?
She showed me her room
Isn’t it good?
Norwegian wood
She asked my to stay and she told me to sit anywhere
So I looked around and I noticed there wasn’t a chair

I sat on a rug
Biding my time
Drinking her wine
We talked until two
And then she said
‘It’s time for bed’

She told me she’d work in the morning and started to laugh
I told her I didn’t, and crawled off to sleep in the bag

And when I awoke
I was alone
This bird has flown
So I lit a fire
Isn’t it good?
Norwegian wood
23 : 58 : 51 | 翻訳 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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